ロックンロール・ハイスクール
ジーパンの股辺りが破れてきた。
自慢じゃないが、僕のジーンズはDenimeの433というヤツで、10年は持つといわれる、なかなかのシロモノだ。直してもらおうと思い、店員に尋ねてみたところ、一月半程かかりますと関西弁の彼は言う。
なるほど代替品ではないが、ならば一本新調しようと思いついたので、以前から腰穿き番長が薦めるフラットヘッドなるものを見てみようと、番長宅の近所にある小さなお店を訪ねてみた。番長の言葉を借りれば、「本物しか置いてないからダサい」店内の奥には頭が少し後退しかけたおっさんが1人。念願のフラットへッドを手に取っていると近づいてきた。
「フラットヘッドがいいの?最近ここのはねえ、ウチのをパクってんだよ。」
瓢箪から駒、寝耳に水とはまさにこのことである。
番長を否定されたことよりもよりその不貞不貞しい態度に戸惑う僕に、おっさんは捲し立てる。50sのレプリカが得意なブランドのパクリジーンズなんかヤメトキナ。ウチのは80sをベースにしてるからあんたにゃ良くお似合いだ。
一呼吸置いて、彼は最後に放った。
「そのさ、あれだよね…コッチはらもーんずみたいな感じよ。」
不覚だった。ボーダーシャツの上に革ジャンを羽織り、番長からもらった両膝が破けたジーンズにコンバースのスニーカーではそう思われるのも無理わない。
大事に育ててきた米を颱風に一夜のうちにさらわれてしまった農家のような(わけのわからない)気持ちと、使い慣れない単語を得意げに話すおっさんへの気恥ずかしさで僕は見境をなくしてしまった。前後不覚とはこのことだ、番長よ。何故か止まらない汗の臭いだけははっきり覚えている。
気づけば財布の中の一万五千円は、おっさんの笑顔と真新しいらもーんず仕様のジーンズに変わっていた。このジーンズ、名をリーサル・ウエポンという(らしい)。ヤツも店もニセモノだ。
野に咲く花のように美しくなりたい。
By higuchi :October 11, 2005
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